ソウギョ(草魚)

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ソウギョ(草魚)
学名
Ctenopharyngodon idellus
(Valenciennes,1844)
和名・ソウギョ    英名Grass carp
     
分類
動物界 Animalia
脊索動物門 Chordata
亜門 脊椎動物亜門 Vertebrata
条鰭綱 Actinopterygii
上目 骨鰾上目 Ostariophysi
コイ目 Cypriniformes
コイ科 Cyprinidae
亜科 ソウギョ亜科 Ctenopharyngodoninae
ソウギョ属 Ctenopharyngodon
ソウギョ C. idellus
 
ソウギョ(草魚) Ctenopharyngodon idellus は、コイ目コイ科ソウギョ亜科に分類される中国原産
の淡水魚で、アオウオ、ハクレン、コクレンと共に中国の「四大家魚」と称される。名のとおり草
食で、水草や水辺の草を貪欲に摂食する。もともと大陸性の長大な大河とそこに連なる湖沼群を
生息場所とし、そうした環境に適応した生態を持つ。原産地の中国では、植物プランクトン食の
ハクレン、動物プランクトン食のコクレン、淡水生巻貝類などを食べるベントス食のアオウオととも
に中国四大家魚と呼ばれている。特に中国南部では、農業と有機的に結びついた伝統的養魚シ
ステムで養殖され、農村地帯の重要な蛋白源となってきた。ベトナムからアムール川流域まで、
中国を中心とした東アジアに広く分布するが、日本を含む世界各地に移入され、外来種として定
着している。
 
特徴・・・体長は2mに達する大型魚だが、日本で見られるのは体長1mくらいまでである。体は一様
に緑灰色で、腹面は黄白色をしており、特に目立つ模様はない。コイに似ているが、コイの背びれ
は前後に細長いのに対し、ソウギョの背びれは小さくて丸っこい。
 
食性・・・草食性で、水草の他、ヨシなどの抽水植物や水面上に垂れ下がった雑草なども食べる。
口に歯はないが、喉に丈夫な咽頭歯をもち、これで植物を刈り取って摂食する。緑色をした1cmく
らいの丸い糞が新鮮な状態で確認できたらソウギョが近くにいる可能性が高い。
 
繁殖・・・繁殖期の初夏になると、成魚は大河に集まって上流に向けて遡上し、浮遊性の大型卵を
産み落とす。産み出されると水を吸い受精卵は5mm程度に膨らみ大河の流れに乗ってゆっくりと
下り、約50時間で卵黄を持った仔魚が孵化する。卵は海まで流されると死んでしまうため、日本
列島では利根川水系以外では自然繁殖が成功しない要因となっている。この繁殖行動と浮遊卵
という特性はハクレンなど他の四大家魚にも共通する。利根川でも堰や水門が相次いで建設さ
れた結果、20世紀末頃にはソウギョやハクレンの遡上も困難になっている。
埼玉県では、種苗養殖が行われている。 昭和30年代には埼玉水産試験場が人工受精に成功、
種苗育成の際にはホルモン注射による採卵も行われている。
 
利用・・・中華料理では、コクレンなどと並んで、重要な食用淡水魚で、中国南部を中心とした各地
で養殖が行われ、流通している。通常は、蒸し魚、煮魚、唐揚げ、スープなどにして食べることが
多いが、福建省の清流県と寧化県、広東省仏山市では、刺身や生の切り身の和え物も伝統的に
食べられている。ソウギョには有棘顎口虫が寄生している事が多く、生食は非常に危険である。
 
寿命・・・一般に、寿命は7年-10年ほどと言われているが、野尻湖では1978年に放流された魚が
2007年時点でも残っていると考えられる。
 
日本のソウギョ
日本では、1878年(明治11)以降に他の四大家魚とともに日本人の蛋白源として日本列島内に導
入が図られ、各地の川や湖沼に放流された。 また、戦後の農業形態の変化に伴って、湖沼に繁
茂する水草が農業肥料などとして利用されなくなり、その繁茂を嫌った世論もあって各地で湖沼
の水草を制限する意図で利根川水系産の種苗が各地に放流された。 しかし巨大に成長したソウ
ギョは旺盛な食欲で各地の湖沼の水草を食いつくし、水草帯を生息地とする在来魚や水生昆虫
の生息を脅かすなど生態系に深刻な悪影響を与えることが認識されるようになった。また、水草
を消化吸収した後に出す膨大な糞が湖沼底に堆積し、却って水質汚濁の原因ともなることが理
解されるに至ったため、自然環境に好ましくない負荷をかける外来種と認識されるようになった。
ソウギョの若魚 ソウギョの若魚
利根川、江戸川以外では繁殖できなくとも、ソウギョ自体の寿命や放流の継続により、これらの影
響は長く続くと考えられている。